日本一わかりやすい小論文講座

大学受験に役立つ小論文の書き方について解説します

第9回 「駅構内のエスカレーターでの歩行に罰金を科すべきか否かについて」(新潟大学の小論文過去問)

 今回は2020年の新潟大学法学部後期の小論文についてやっていきます。

 

 小論文の問題は次のとおりです。

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 それではまず初めに設問の指示について詳細に確認しましょう。設問の指示は以下の図の通り3点です。まず1点目として、駅構内のエスカレーターの歩行を禁止すべきか否かについて自分の意見を述べることが求められてます。次に2点目として、歩行を禁止すべきと考える場合、科料を科すべきか否かについて自分の意見を述べることが求められています。最後に1000字以内で記載することが求められているので1000字の9割である900文字以上1000字以内で書くことが望ましいです。小論文では設問の内容をきちんと踏まえて回答しないと大幅減点になってしまいます。みなさん、気をつけましょう。

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 それでは、想定される意見を整理しましょう。今回の問題では想定される意見は3パターンあります。①駅構内のエスカレーターの歩行を禁止すべき且つ禁止制度に科料を科すべき、②歩行を禁止すべき且つ禁止制度に科料を科すべきではない、③歩行を禁止すべきではないの3パターンです。それでは以下の図のように、それぞれの意見について、そう考える理由を書き出してみましょう。

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 まず、①については、エスカレーターの歩行により重大な転落事故などが発生する危険があるから、それを禁止すべき。また、科料を科すことで禁止行為に対して強い抑止力を持たせられることができることが理由として挙げられます。

 

 次に、②については、①と同様に事故を防ぐために禁止すべき。一方、科料なしの制度の方が国会や地方議会で揉める可能性が低く、早急な制度整備が期待できる。もしも、科料なしの制度で効果が見られない場合、科料ありで制度を改定すれば良いという点が理由として挙げられると思います。
 

 最後に、③については、仕事などで急いで移動したい人もいるので、個々人の事情を尊重すべきという理由が挙げられるかもしれません。

 

 整理した結果、②が一番充実した内容が書けそうなので、今回は②の内容で小論文を書いていきます。 

 

 なお、小論文を書くにあたっての留意点は以下の通りです。

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 まず、文章は自分の意見、理由、理由を支持する根拠の順序で書いてください。次に根拠は主観的な感情ではなく、客観的な効果や実際の事例、数値などを示すようにしてください。今回は900字以上も書く必要があるため、字数を稼ぐ上でも、想定される反対意見を示し、それを反論するといいでしょう。最後に、設問では科料を科すべきか否かについて重点的に書くことを示唆しているので、このパートにより多くの字数を割くように心がけましょう。

 

 それでは、合格答案は以下の通りです。

 

合格答案

 私は、駅構内のエスカレーターの歩行を禁止すべきと考える。なぜならば、エスカレーターの歩行は重大な転落事故を引き起こす可能性があり、とても危険だからかである。実際にエスカレーターでの歩行が原因での転落事故は度々発生しており、死亡事故につながる事例も多数存在する。私が小学生の頃、近所に住んでいた女性もエスカレーターで早歩きで降りてくる人と接触することで転落してしまい、身体を複数箇所骨折し、全治半年の大怪我を負った。このような事件を防ぎ、人々の安全を守るためにはエスカレーターでの歩行は早急に禁止すべきである。

 確かに、仕事などの事情で駅構内を迅速に移動したい人は多いと思われる。ただし、今回の場合においては、そのような個人の都合よりも人々の安全が重視される必要がある。まずは、駅構内で人々が危険なく安全に移動できる環境を達成することを目指すべきである。

 一方で、私は駅構内のエスカレーターの歩行禁止について、まずは科料なしの法律もしくは条例を整備すべきであると考える。その理由としては制度を早急に整備するためである。法律や条例は国会や地方議会で議員によって議論され、最終的には多数決で彼らや彼女らの過半数の賛同を得る必要がある。議員は様々な考えを持っており、当然ながら科料を求めることに否定的な考えを持つ議員も存在するであろう。もし、最初から科料を求める内容でエスカレーターの歩行を禁止する制度内容を議会に提案した場合、一部の議員から反対意見が出されて議会が紛糾する可能性がある。更には多数決の結果、反対多数で提案が否決されてしまう可能性も十分に考えられるだろう。そのため、まずは科料なしでエスカレーターの歩行を禁止する制度について議会での可決を目指すべきである。科料なしの提案内容ならば、科料ありの内容に比べて、より迅速且つ確実に議会で可決される可能性が高い。

 もしも、科料なしの制度で十分な効果が得られなかった場合には、科料を求める内容で制度の改定を目指せばいいのである。実際に科料なしでは十分な効果が得られなかったという事実があれば、議会においても、科料ありの制度内容について反対議員を説得しやすくなり、最初から科料ありの制度内容を議会に提案するよりも議会で可決されやすくなるであろう。

 以上の理由から、私は駅構内のエスカレーターの歩行を禁止する制度を作るべきだが、迅速性及び確実性の観点からまずは科料なしの制度整備を目指すべきであると考える。

(973文字)

 

 みなさん、どうでしたでしょうか?正しい回答方法に基づき日頃から小論文を書くトレーニングをしていれば、確実に試験でも合格答案を書けるようになります。これからも小論文のトレーニングを一緒に頑張りましょう。