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大学受験に役立つ小論文の書き方について解説します

第11回 地球環境問題の解決に向けてどのようにしていったらよいか(京都教育大学の小論文過去問)

 今回は2021年の京都教育大学教育学後期の小論文をやっていきます。地球環境問題は入試でよく出題されるテーマですので、受験生はぜひ読んでいってください。

 

設問

 地球温暖化をはじめとする地球環境問題の解決のためには国際的な協力の取り組みが必要といわれているが、国連が中心となって開催する地球環境に関する国際会議においては先進国と発展途上国の主張の相違から議論が進まないこともある。先進国、発展途上国それぞれの主張を簡潔にまとめた上で、地球環境問題の解決に向けてどのようにしていったらよいか、600字以内であなたの考えを述べなさい。

 

 それではまず設問の指示を以下の通り整理しましょう。小論文では設問の指示をきちんと踏まえることが最重要です。設問をしっかりと読み込む習慣をつけましょう。

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 まず、地球環境問題に対する先進国、発展途上国それぞれの主張を簡潔にまとめる必要があります。字数としては大体100字程度でまとめればいいと思います。その上で、地球環境問題の解決に向けてどのようにしていけばいいのか述べる必要があります。つまり解決策を示さなければなりません。最後に字数制限が600字以内なので540字〜600字の範囲で書くようにしましょう。

 

 それでは最初に先進国と発展途上国の地球環境問題に対する主張を下図のように整理してみましょう。

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 まず、先進国の主張は「地球環境問題は先進国と発展途上国が一丸となって対応する必要がある。」という内容です。これは正論ですよね。いくら先進国が環境対策をしても、発展途上国が環境汚染を続けていたら地球の環境問題は解決しません。

 一方、発展途上国の主張としては「先進国はこれまで地球環境よりも自国の経済発展を優先して豊かになった。発展途上国だって、今は経済発展を優先して早く豊かになりたい。」というものがあります。この気持ちはわかりますよね。これまで先進国は自分が豊かになることを最優先してきたくせに、自分が十分に豊かになった後に発展途上国に対して、豊かさの追求よりも地球環境への対応を優先しろと言っても発展途上国は素直には受け入れられないでしょう。

 もう一つの発展途上国の主張としては「発展途上国は先進国と違って、地球環境問題を解決するための省エネ技術や賃金を持っていない。」という点が挙げられます。彼らも自国の環境汚染をなんとか改善したいとの思いはあるものの、そのための技術や資金がなくて困っているのです。

 

 今回の小論文では、上で挙げた発展途上国の主張がそのまま地球環境問題の課題となります。それではこれらの課題に対する解決策を下図のように整理してみましょう。課題と解決策を明確にできたならば、小論文を書く下準備はバッチリです。

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 まず、発展途上国は地球環境問題よりも自国の経済発展を優先したいと考えていることに対する解決策としては、例えば二酸化炭素の排出量の削減目標などについて、先進国を高めに、発展途上国を低めに設定することが挙げられます。このような差がついていれば、発展途上国も受け入れやすくなるでしょう。次に、国連が中心となって地球環境への対策を世界に訴えることも効果があるでしょう。国際世論が地球環境対策が重要と考えるようになれば、発展途上国も自国の経済発展のみを考えるのが難しくなります。実際、国連は、SDGsSustainable Development Goals)と呼ばれる2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標を策定しました。現在、各国の政府や企業はSDGsに則り、地球環境にやさしい取り組みを積極的に行うようになってきています。

 もう一つの課題としては、発展途上国は地球環境問題を解決するための省エネ技術や資金を持っていない点が挙げられます。これに対しては、先進国が発展途上国に対して技術や資金を積極的に支援することが解決策となるでしょう。

 

 小論文を書く際のポイントは下図の通りです。

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 今回は、最初の段落で先進国と発展途上国の主張を100字程度で簡潔に述べてください。次に上で述べた2つの課題とそれに対する解決策を重点的に述べましょう。なお、解決策を述べる際には具体的な事例や数値に言及してください。そうすると提示した解決策に強い説得力が出てきます。最後に文章全体を540〜600字でまとめるようにしましょう。合格答案は以下の通りです。

 

合格答案

 地球環境問題に対して、先進国は「各国が協力して積極的に対策すべき。」と主張するだろう。一方、発展途上国は「今は地球環境よりも経済成長を優先したい。更には地球環境対策のために必要な技術や資金を有しておらず、対策を取りたくても取れない。」と主張すると思われる。

 地球環境問題への解決に向けて、まずは発展途上国に配慮した目標設定が必要である。例えば、二酸化炭素の排出削減量について、先進国は高めに、発展途上国は低めに設定すれば、発展途上国の協力を受けられやすくなるだろう。また、国連がSDGsなどを通じて環境問題対策の必要性を世界に訴えて、発展途上国も環境対策に取り組まざるを得ないような国際世論を形成することも効果的である。もし、環境に配慮しないと商品の輸出や投資の受け入れに支障が出ることとなれば、発展途上国も自国の経済的利益から環境対策を必死に取り組むことになるであろう。

 更には、先進国から発展途上国に対して、地球環境対策に有効な技術支援や資金提供を積極的に行うことも重要である。例えば、日本は太陽光パネル風力発電による発電ノウハウを有しており、そのような設備や運行ノウハウを発展途上国へ積極的に提供するとともに、必要な資金についても支援することが発展途上国ひいては地球全体の環境問題への解決へつながっていくであろう。

 以上のように、地球環境問題を解決するためには、先進国が発展途上国へ配慮や支援を行うとともに、地球環境の重要性に対する国際世論を形成することが肝要であろう。(598文字)

 

 みなさん、どうでしたでしょうか?正しい回答方法に基づき日頃から小論文を書くトレーニングをしていれば、確実に試験でも合格答案を書けるようになります。これからも小論文のトレーニングを一緒に頑張りましょう。