第5回 小論文の出題パターン3−2 グラフ・資料タイプの意見提示の問題
今回は小論文の出題パターンの1つであるグラフ・資料とセットとなった意見提示型の問題に対する回答方法について解説していきます。
グラフ・資料とセットとなった意見提示型の問題の場合、最初にグラフ・資料を確認することから始めます。多くの場合、最初にグラフ・資料から読み取れる内容を述べることが求められ、その次にその内容に対する自分の意見を提示することになります。
それではまずは、グラフの種類について説明していきます。
グラフは大きく分けて3種類あります。棒グラフは棒の高さで量の大小を比較します。例えば各国の人口を比較する際に適しています。次の折れ線グラフは量の変化を表します。例としては日本の人口変化を表すのに適してます。円グラフは全体の中の構成比を示します。例えばお店の全体売り上げに占める各商品の売上比率などを示すのによく使います。
グラフを確認する際のポイントは3つあります。
まず第一にグラフの全体トレンドを確認してください。特に折れ線グラフについて全体的に上向きなのか、下向きなので、横ばいなのか確認することが必要です。
第二としては、各グラフの中から特徴的なポイントを確認してください。棒グラフの場合は他と比べて著しく高いもしくは低い項目がないか。折れ線グラフの場合、線が急に上がっているもしくは下がっている時期がないか。円グラフの場合は全体に占める割合が著しく大きい項目がないかを確認することが必要です。そのような特徴的なポイントは出題者が注目すべきと考えている可能性が高いです。
第三として、グラフの内容について述べる際には必ず全てのグラフについて言及してください。出題者は全てのグラフに対して何らかの意図を持っています。もし、言及しないグラフが1つでもあったらそれだけで大幅減点になってしまいますので注意しましょう。
それでは例題をやっていきましょう。
左側のグラフは18歳若者に「日常生活の中で経済的な「格差」を感じることはありますか。」と質問した際の回答を円グラフにしたものです。これを見ると50%以上の若者が格差を感じると回答しています。
右側のグラフでは1990年から2017年までのジニ係数の値を棒グラフで表しています。ジニ係数とは所得の格差を示す指標であり、値が高いほど所得格差が大きいことになります。
なお、棒グラフは2種類あり赤色が当初の所得についてのジニ係数、青色が再分配後の所得についてのジニ係数です。再分配とは政府が高所得者から税金や社会保険料などを徴収し、低所得者へ手当金や支援金を支給することで高所得者から低所得者へ所得を移転させる行為を指します。
最後の赤色の折れ線グラフは改善度です。これは政府による再分配の程度を示しています。再分配を積極的にやればやるほど改善度は高くなります。
それではグラフから読み取れるポイントをまとめていきましょう。
まず、円グラフについてですが、18歳の過半数が格差を感じていることが読み取れます。
次に棒グラフです。1点目として、再分配前の所得格差が拡大傾向にあることがわかります。一方、2点目として再分配後の所得格差についてはほぼ変化がないことがわかります。
最後に折れ線グラフについては、政府による再分配は強化傾向にあることがわかります。
ポイントを踏まえた回答案は以下の通りです。
マスコミなどの報道もあり、格差が拡大傾向にあると考えがちですが、今回のグラフを見る限り、格差は拡大していないことがわかりました。実際に入試試験においても、一般的な考えとは異なる内容をグラフが示していることが多くあります。みなさん、自分の先入観に囚われずに、丁寧にグラフを読み込む習慣を身につけてください。
それでは設問2をやっていきましょう。
グラフ・資料とセットとなった意見提示型の問題で自分の考えを述べる際のポイントは他のタイプの問題とほぼ同じです。
まず、グラフの情報を踏まえて、自分の新しい意見を書いてください。次に、意見、理由、理由を支持する根拠の順序で書いてください。最後に、根拠には客観的な事実を挙げてください。
それでは合格答案を見ていきましょう。
この合格答案では、政府による積極的な所得格差の是正に賛成を示した上で、その理由として所得格差が子供の教育格差につながり格差の固定化を招く点を挙げ、実際に米国では深刻な教育格差が問題になっていることを根拠として示しています。
みなさん、グラフ・資料を見て答える意見提示型の問題の回答方法についてわかりましたか。正しい回答方法に基づき日頃から小論文を書くトレーニングをしていれば、確実に試験でも合格答案を書けるようになります。
最後になりますが、このブログの内容は以下のYoutubeでも解説しています。もしよければご視聴ください。また、Youtubeにアップしている動画スライドについても参考までに添付しておきます。
これからも皆様の小論文スキルが向上することを目指して、これからも情報発信を続けますので、引き続きよろしくお願いいたします。